今回はこんな悩みにお答えしていきます。
日本では企業の規模や業種を問わず、多くの会社が従業員の副業を禁止しています。
就業規則に副業や兼業禁止規定があり、違反すると懲戒事由になっている会社も多いでしょう。
では、そもそも企業側に従業員の副業を禁止する権利が認められるのでしょうか?
そこで本記事では副業禁止が違法かどうか、企業が副業を禁止する理由、バレる理由やバレないための方法について解説します。
この記事でわかること
- そもそも副業禁止は違法なのか
- 企業が副業を禁止する理由
- 会社に副業がバレるきっかけ
- 副業をバレないようにする方法
- まとめ
目次
そもそも副業禁止は違法なのか
まずは副業禁止規定は違法ではないのか、法律的な観点から解説します。
副業禁止は違法ではない
企業が「就業規則に副業禁止規定をおくこと」自体は違法ではありません。
労働基準法やその他の法律により「労働者の副業を保障しなければならない」という定めはないからです。
実際に、従業員が副業に熱心になりすぎて本業をおろそかにすると、企業側には損失が発生するでしょう。
従前、厚生労働省も就業規則の見本として公表していた「モデル就業規則」において「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止規定の定めをおいていました(現在のモデル就業規則においては、副業解禁の流れを受けて削除されています)。
副業禁止は企業にとって合理的だと考えられていたのです。
以上のように副業を認めるかどうかは基本的に雇用者側の自由であり、企業が自主判断で副業を禁止しても直ちに違法にはなりません。
副業禁止規定の効果は絶対ではない
副業禁止は絶対的なルールではありません。
実は副業禁止規定にもとづく処分が違法と判断されたケースも多数あります。
たとえば従業員が副業禁止規定に違反したからといって、企業側が自由に懲戒処分できるわけではありません。
企業が副業を禁止する違法性
企業が従業員の副業を禁止できる根拠は、本業に支障が及んだり企業の重要な情報が流出したりするおそれがあるからです。
こういったリスクがないのに一律に副業や兼業を不許可としたり、懲戒解雇したりすると「違法」と認定される可能性が高くなります。
副業禁止規定にもとづく解雇が違法とされた裁判例
副業禁止規定違反を根拠に懲戒解雇が行われ、「解雇が無効」と判断された裁判例をご紹介します。
他の会社で高額な報酬を得ていた事例
東京高等裁判所平成31年3月28日判決
兼業禁止規定のある会社に勤務していた人が、在職中、許可なく不動産会社の代表取締役となって年間1920万円もの役員報酬を得たケースです。
会社は兼職禁止規定にもとづいて本人を解雇しました。
裁判所は「本業に具体的な支障が生じていた根拠がない」として、会社による懲戒解雇を「不当解雇」と判断しました。
会社へ約2700万円の支払命令が下されて、従業員の復職も命じられています。
家業の手伝いで懲戒解雇された事例
福岡地方裁判所昭和59年1月20日決定
タクシー会社に勤務していた従業員が、父親の経営する新聞の販売店を手伝って新聞配達や集金等の業務を行っていたケースです。
勤務先のタクシー会社は就業規則の「兼職禁止規定」に違反するとして、従業員を懲戒解雇しました。
裁判所は、会社における労務に支障を生じさせておらず「兼職禁止規定」に違反しないとして懲戒解雇を無効と判断しました。
公務員は例外として副業が全面的に禁止される
以上のように、一般の会社員については副業を認めるかどうかは各企業の方針に委ねられており、違反したからといって当然副業禁止規定の効果が認められるとも限りません。
本業への支障の程度が低ければ、副業禁止規定があっても懲戒できないケースが多々あります。
一方で、公務員については国家公務員法や地方公務員法において「報酬を得て企業の役員や顧問等になること」「事業を行うこと」が明確に禁止されています。
公務員は国民の税金を給与として受け取り、国民全体のために奉仕しなければならない立場です。
副業すると、特定の業種や団体に利益を与えるととらえられかねません。
また全体の奉仕者としての本業に支障を及ぼす可能性もあるので、所轄庁の特別の許可を受けない限り、副業をしてはならないと定められています。
「副業を禁止するかしないかは会社の自由で、副業禁止規定があっても従業員の自由を過度に制限してはならない」のが基本ですが、公務員については例外、と理解しておきましょう。
企業が副業を禁止する4つの理由
現在、自由な働き方が推奨されており「副業を認めるべき」という動きが強まってきています。
政府としても「副業を禁止する必要はない」という認識を持つようになり、2018年1月には厚生労働省の「モデル就業規則」からも副業禁止規定が削除されました。
それでも現在においても副業を禁止している企業が多数あります。
なぜ副業を認めないのか、主な理由をみてみましょう。
企業が副業を禁止する4つの理由
- 本業に支障をきたす可能性がある
- 企業の秘密を漏洩される可能性がある
- 会社の名誉や信用を毀損される可能性がある
- 人材が流出するリスクがある
それでは順番に解説していきます。
理由1. 本業に支障をきたす可能性がある
副業を認めると、従業員が本業よりも副業に熱心に取り組み、本業に支障が出る可能性があります。
勤務時間中に副業する人もいますし、副業で疲労したり睡眠不足がたまったりして本業のパフォーマンスが落ちる可能性もあります。
理由2. 企業の秘密を漏洩される可能性がある
副業の際には「本業で得た知識や経験などを活かしたい」と考える方が多いでしょう。
これは、裏を返すと会社の独自の技術や社内システムを外で使われることを意味します。
ときには重要な企業秘密を漏洩されるおそれも発生します。
本業で得た人脈を副業に活かされると、単なる「副業」ではなく「競業」になってしまうケースも考えられるので、リスクを取りたくない企業は副業を禁止します。
理由3. 会社の名誉や信用を毀損される可能性がある
会社が従業員の副業の進め方について、目を光らせてすべてを監視するのはほぼ不可能でしょう。
従業員の自己判断に任せると、本人も知らずしらずの間に違法行為をしてしまい、結果として雇用主である会社のイメージや信用を毀損するリスクが発生します。
理由4. 人材が流出するリスクがある
副業を始めると、本業よりも副業のやりがいの方が大きくなったり他社へ目が向いたりして、転職のきっかけになるケースもよくあります。
企業側にしてみると、副業許可には人材流出のリスクをともなうのです。
上記のほか、労災が起こったときに本業によるものか副業によるものかわからなくなる、労働時間の管理や把握が困難になる、といった事情で副業を禁止する企業もあります。
副業禁止の会社で副業がバレるとどうなる?
副業禁止の会社で副業がバレると、懲戒処分をされる可能性があります。
ここでは具体的な懲戒処分の種類を6つみてみましょう。
懲戒処分の種類
- 戒告
- 減給
- 出勤停止
- 降格
- 諭旨解雇
- 懲戒解雇
それでは順番に解説していきます。
種類1. 戒告
「二度とこのようなことをしてはならない」と厳重注意する処分です。
始末書の作成を求めるケースもあります。
種類2. 減給
給与を一定程度、減額されます。ただし労働基準法上、減額できる限度が決まっています。
種類3. 出勤停止
一定期間出勤を禁止する処分です。出勤停止中の給料は支払われません。
種類4. 降格
役職や職能資格などを下げられる処分です。
種類5. 諭旨解雇
懲戒解雇を前提に退職を勧告して、自主的に退職させる処分です。従業員が自主的に退職しない場合、懲戒解雇が行われます。
種類6. 懲戒解雇
もっとも重い懲戒処分で、対象従業員を解雇する処分です。
副業がバレると上記のいずれかの懲戒処分が適用される可能性があります。
ただし副業がバレても特に何の対応もしない企業も少なくありません。
また本業への支障が及ばないのに解雇などの重い処分をされると「無効」となる可能性が高くなります。
会社に副業がバレる理由・きっかけ
会社に副業がバレる理由として多いのは、以下のようなきっかけです。
会社に副業がバレる理由・きっかけ
- 副業しているところを見られた
- 給与や税金関係の手続き
- 自分でしゃべってしまう、行動が変わって不審に思われる
- 副業関連のSNSをみられて身バレした
それでは順番に解説していきます。
理由1. 副業しているところを見られた
副業の勤務先の飲食店ではたらいているところに上司や同僚が来たなど、「副業しているところを見られた」パターンが多くみられます。
PCを使って副業関係の作業をしているところをみられてバレるパターンもあります。
理由2. 給与や税金関係の手続き
副業で一定以上の利益が出たら、確定申告をしなければなりません。
住民税を特別徴収にすると、役所から会社へ住民税の通知があり、人事や経理の担当者が「住民税が異様に高い」と勘づいてしまいます。
複数の会社で働いている方は、年末調整時に他の会社からも給料をもらっていることがバレるケースもあります。
理由3. 自分でしゃべってしまう、行動が変わって不審に思われる
副業をすると、ついつい周りの人へ話したくなるものです。
しかし同僚にしゃべると、人づてにうわさが広まって上司にも知られてしまう可能性が高まります。
また、副業をしていると金銭感覚が変わったり、常にスマホを見ていたりして「行動が変わった」ことにより、不審に思われてバレるケースもあります。
理由4. 副業関連のSNSをみられて身バレした
副業関連でSNSアカウントを作って投稿していると、会社の関係者が見かけて本人特定される可能性があります。
匿名アカウントにしていても、知っている人がみればわかるケースも多いので投稿内容には慎重になるべきです。
副業をバレないようにする方法
副業をバレずに行うには、以下のような点に注意してみてください。
会社に副業をバレないようにする方法
- 確定申告の際の住民税の払い方に注意
- 人に話さない
- SNSの利用方法に注意
それでは順番に解説していきます。
方法1. 確定申告の際の住民税の払い方に注意
確定申告の際の住民税徴収方法については「普通徴収」を選択しましょう。
普通徴収にすると、副業にかかる住民税は本人が自分で払うので、役所から会社へ通知されません。
会社の担当者が「住民税が異様に高い」と不審に感じるきっかけを作らずに済みます。
普通徴収を選ぶと、確定申告した年の6月頃に役所から住民税の納付書が届くので、期限内に支払いをしましょう。
方法2. 人に話さない
副業がうまくいき始めると、どうしても周りにしゃべりたくなるものです。
「この人なら信用できる」という仲の良い同僚相手であれば「口止めさえしておけばしゃべっても大丈夫」と考える方も少なくありません。
しかし何がきっかけで他に漏らされてしまうかはわかりません。
バレたくないなら「誰にも話さない」のが一番です。
信用できる相手であっても、会社関係者には副業について絶対に話さないようにしましょう。
方法3. SNSの利用方法に注意
副業関係の情報をSNSで発信する場合には、身バレしないように注意すべきです。
勤務先の会社名や製品、商品、サービス名、個人名を出さないのはもちろん、会社での出来事や愚痴なども投稿すべきではありません。
また会社関係者のいる場所ではSNSの画面を開いたり投稿したりしないようにしましょう。
まとめ:副業禁止は違法?禁止理由は?【バレずに副業する方法も解説】
まとめ:副業禁止は違法?禁止理由は?【バレずに副業する方法も解説】
- 副業を禁止するかしないかは会社の自由で、副業禁止規定があっても従業員の自由を過度に制限してはならない
- 企業が副業を禁止するのは「本業に支障をきたす」「企業秘の漏洩」「会社の名誉毀損」「人材流出」といったリスクを避けるため
- 会社に副業がバレる理由は「給与や税金関係の手続き」「人づてに噂が広まる」「SNSを特定される」などがある
- 副業をバレずに行うには、副業していることを誰にも話さず、また確定申告の住民税の払い方に注意しよう
今回は副業禁止が違法かどうか、企業が副業を禁止する理由、バレる理由やバレないための方法について解説しました。
基本的に副業を認めるかどうかは基本的に雇用者側の自由であり、企業が自主判断で副業を禁止しても直ちに違法にはなりません。
とはいえ大したリスクがないのに一律に副業や兼業を不許可としたり、懲戒解雇したりすると「違法」と認定される可能性が高くなります。
また「給与や税金関係の手続き」「人づてに噂が広まる」「SNSを特定される」などの理由によって、会社に副業がバレるケースも少なくありません。
もしも会社が副業禁止である場合は、副業していることを誰にも話さず、また確定申告の住民税の払い方に注意して、しっかり対策しましょう。